財団法人 社会経済生産性本部が実施した2007年度『
将来の経営幹部育成に向けた選抜人材教育に関する調査』の結果を採り上げてみましょう。
選抜研修を実施した企業は2年連続で増加しており、「今以上に力を入れる」企業が51.7%と半数を超えています。選抜研修で重視している内容では「組織の進む方向やビジョンを描く構想力」などが増加して点は、うれしいですね。
この背景には、従来の階層別・職能別研修が、社員個々のニーズやタイミングに適合せず、受講意欲や受講後の満足度が低いなどの問題があり、結果として、効果が見えにくいという問題があります。さらには、経営者・管理者の早期選抜による早期育成の必要性が高まっています。
ただ、企業側の懸念には、「納得できる選抜基準がない」、「非選抜人材のモチベーションが下がる」が多く挙げられているため、選抜されなかった人材へのフォローを重視する企業が増加しているのは当然でしょう。
しかし、本来、選抜研修の導入目的は、「参加したい動機も無いまま画一的に実施される研修」からの脱却であり、受講者個々の必要性、キャリア・プランに応じたタイミングでの実施ということにあります。従って、社員が主体的に『選択』する研修でなければなりません。経営幹部の早期養成を焦るあまり、会社側が『選抜』する姿勢を強く与えるようでは、選抜されなかった者の意欲が低下したり、人間関係が悪化するケースも少なくないでしょう。
まずは、社員一人ひとりが、
自らのキャリア・ビジョンに基づき、「
自己責任による能力開発」にコミットし、自分の雇用機会は、自分で獲得、確保するという考え方が定着しなければ、『選抜』研修は歓迎されないでしょう。社員が上司や会社の顔色を伺うようでは機能しない制度になってしまいます。