〜タレント・マネジメントとは何か?〜
新年、明けまして、おめでとうございます。今年、最初の「経営いろは帖」をお届けします。
皆さんは、「タレント・マネジメント」という言葉を聞いたことがありますか? 芸能プロダクションを経営することではありません。
二つの定義を見てみましょう。
●世界最大の人材マネジメント協会SHRMの定義
「タレント・マネジメントとは、人材の採用、選抜、適材適所、リーダーの育成・開発、評価、報酬、後継者養成等の人材マネジメントのプロセス改善を通して、職場の生産性を改善し、必要なスキルを持つ人材の意欲を増進させ、現在と将来のビジネスニーズの違いを見極め、優秀人材の維持、能力開発を統合的、戦略的に進める取り組みやシステムデザインを導入すること。」
●米国人材開発協会ASTDの定義
「タレント・マネジメントとは、仕事の目標達成に必要な人材の採用、人材開発、適材適所を実現し、仕事をスムースに進めるため、職場風土(Culture)、仕事に対する真剣な取り組み(Engagement)、能力開発(Capability)、人材補強/支援部隊の強化(Capacity)の4つの視点から実現しようとする、短期的/長期的でホリスティックな取り組みである。」
※短期/長期的でホリスティックな取り組みとは、将来の目標を実現するため、現在の戦力を組織横断的、グローバルな視野で戦略的に関連付けて人材開発する取り組みを言う。
以上の定義は、経営品質向上プログラムに取り組んだ方にとっては、目新しさはありません。ただ、現実には、様々な人事制度の仕組みがバラバラな企業も珍しくはありません。ぜひ、タレント・マネジメントの視点を取り入れることをおすすめします。
例えば、最近、表面的な成果主義から、プロセス重視に転換する企業が増えてきました。その理由は、成果主義を導入することで、「意欲が向上した人が、16,1%しかいない」ことが分かったからです。成果がでないと評価しないという人事考課手法に問題があるだけでなく、現場での適切なフィードバックや人材開発が、充分機能していなかったのでしょう。
従って、統合的、戦略的に進める取り組みやシステムデザインというタレント・マネジメントの視点で考えるなら、資生堂が、2008年4月より、化粧品業界で初めて、従業員のノルマを撤廃することも当然と言えましょう。それまでは、美容部員の人事評価の20%は、売上でしたが、顧客満足度を15点で評価し、売上評価に置き換えたのです。ノルマ主義により、顧客満足の低下をきたしたのでは、経営方針に反することになるからです。